教官のつぶやき+近況<研究、診療、教育、医局>
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すぐに役に立たない勉強(3)
 この話しは、カテゴリから「すぐに役に立たない勉強」を選んでいただき、下の(1)から順番に読むと少しは分かりやすいかもしれません。
エピジェネティックスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
DNAの遺伝子塩基配列(設計図)によらない、遺伝子発現調節機構であり、生活習慣病の原因を探るときには、必須の考え方になりつつあります。
 第二次世界大戦のときに、ナチスがオランダに攻め入り、オランダのある地域に食べ物の輸送ができなくなりました。さらに、同じ時期の冬に寒波が来てそこが大飢饉になりました。多くの死者もでたのですが、飢えを凌いで生き延びた方(妊婦)の子供にある特徴がでたという研究結果が報告されました。饑餓のときに妊娠早期にあった胎児が無事に生まれて成人になってからの事を調べると、BMIが高く、冠動脈疾患の発症率が高いという結果が得られました(Dutch hunger winterと呼ばれます)。この事象に関して、遺伝子の設計図が饑餓によって変わるわけがないので、「饑餓のエネルギー不足という事実がエネルギーを溜め込むような遺伝子発現が優位になるようなエピゲノム変化を起こした」…ということで、設計図のDNAのみならず、その発現調節が疾患発症に多いに関連するということが証明されたわけです。ちなみに、このエピジェンティックスの変化は、同じ個体では細胞分裂をしても維持されます。
 このエピジェネティックな制御で、有名なのは2つあります。まずはDNAのメチル化と、ヒストン蛋白のアセチル化とメチル化を覚えておけば良いと思います。DNAのメチル化はDNAのATGCのうち、C(シトシン)とA(アデニン)にメチル基(-CH3)が付加された状態です。生体では、CGが繰り返しならんだメチル化制御領域のCがメチル化され、遺伝子発現(転写)が抑制される傾向になります。
 ヒストン蛋白というのは、2重らせん遺伝子DNAを糸巻きのように巻くように存在させるための蛋白で、これによって巻かれた細い糸が再度太い糸のようにコイル状に巻きこまれて存在しクロマチンと呼ばれます。逆に、遺伝子が読みとられてmRNAができるときには、このクロマチン(DNAとヒストンのからみつき)構造が揺んで転写されるので、緩みにくければ転写しにくい…ということになります。このヒストンがメチル化していると緩みにくく(転写されにくく)、アセチル化していると緩みやすい(転写促進)と一般的に考えれば良いようです。
 エピジェネティックスの制御は、上記のメチル化やアセチル化によって、その転写、すなわちその遺伝子を使用して蛋白をどれくらい作るかを制御しているということです。同じ設計図を持っていたとしても、ある人はそれをたくさん使用して、ある人はそんなに利用しない…という差で、病気になりやすかったりなりにくかったりするということです。
 現在では、主に癌の治療薬としてこのエピジェネティックスに介入するような薬剤がありますが、我々の扱う生活習慣病にも応用されるようになるのでしょうか? ty
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