教官のつぶやき+近況<研究、診療、教育、医局>
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色々考えましょう
 山陽新幹線で九州の福岡に到着する数分前に、久山町(ひさやままち; ひさやまちょう と呼ばれることも多いのですが、正式には”まち”と読むそうです)という田舎の佇まいのところを通過します(看板で分かります)。日本の循環器内科医ならば、聞いた事がある名前でしょう。
 九州大学医学部が長期にわたり40歳以上の住民健診をベースにした臨床観察研究(コホート研究)を行っている『久山町研究』で有名な町です。米国のフラミンガムスタディーも有名ですが、それに数年遅れで1961年に開始されており、日本人の臨床研究において大変重要な意義をもつ研究であるわけです。政治的というのか、様々な開発の規制を設けることで、50年前からちょうど日本全体の年齢人口構成と同じ状態を維持して、研究を進めているように聞いた記憶があります。また、私のどこかで勉強した記憶では、この臨床研究において脳出血と診断されていた病態が、それほど多くはなく、じつは脳梗塞であったと言う事が分かった…という歴史があったはずです。
 7月24日に岡山で開催された研究会に参加させていただき、久山町研究の最近の成果を九州大学のK教授からご紹介いただき、勉強させていただきました。50年前に比べて、脳卒中は約4分の1に減少しているのですが、年間発生率はまだ4%近くあり、心筋梗塞は年間発生率2%前後と50年前と大きく変化していないという結果でした。高血圧の管理がうまくいくようになっても、肥満・糖代謝異常・脂質異常症の増加が心血管イベントの減少を妨げているようなデータでした。そして、どのような人にイベントが起きるのかということに関しては、high sensitive CRP(hs CRP)の高値の人に、かなり高率にイベント発生があるようで、日本でも欧米のデータと同じです。K先生は、やはりhs CRPの高いのは肥満の方が多いです…とおっしゃっていました。これも、私自身が診療の中で経験する印象と同じでした。日本では、高度肥満はあまりないですが、比較的軽度の肥満でもhs CRPが高い方を時々見ます。hs CRPが、どれほど炎症の状態を反映するのかも不明ですが、少なくとも炎症を制御することは、心血管イベントの予防に貢献することは証明されているし、我々はもっと疾患制御のために炎症を意識すべきで、何かの新たな介入(できれば、医療費を増加させずに、安価な)方法を考えないといけないと思います。
 個人的には、このような臨床研究でのエビデンスを大切にしながら、基礎研究の手法を用いて、その機序を解明し、それを基盤にした臨床応用可能な治療法・予防法を提言していくことが重要ではないかと考えています。日本人のデータを尊重して、効率の良い心血管イベント予防法を考える上では、やはりイベント発生が低率の集団(日本人)に対して、一次予防のために多額のお金をかけるより、一度イベント発生のあった方に、とにかく二度目のイベントを発生させないようにする二次予防に徹底的にこだわる方が効率が良いわけです。そういう意味で、循環器内科医が狭窄を広げることだけに必死にならず、科学的に「何が本当に必要なのか?」を考えて、医療を提供していく必要があると強く思います。もちろん、一次予防に関しても、何もしないで良いわけではなく、安価な予防法を提唱することは重要かと思います。そういうイノベーションを起こすことを目指して研究をしないといけないと思います。循環器診療に関わるみなさん、色々考えていますでしょうか? ty
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