教官のつぶやき+近況<研究、診療、教育、医局>
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すぐに役に立たない勉強(2)
 医学ばかりで、科学の勉強をあまりできていない人にも、少しでも興味を持っていただくために、臨床でも役立つであろう科学の基礎知識をできる範囲で分かり安く解説してみようかと思います。できれば、これで興味を持つきっかけになって、さらに深く勉強してもらえればと思います。

 生物で(昔に)習った「セントラルドグマ」は知っていますね。ヒトの遺伝子(ゲノム)は、30億塩基対で10万個以上あり、転写によりmRNAが作られ、さらに翻訳されて蛋白が作られる…と考えられていましたし、このように勉強しました。確かにこの理論は普遍であるわけですが、「ヒトゲノム計画」によって、なんとそのような蛋白をコードする部分はゲノム(DNAの塩基配列…すなわち設計図)の1.5%しかない事が分かりました。あとの98.5%はプロモーターやイントロンなどの蛋白をコードしない部分であることが判明し、どういうこと?となったわけです。ヒトゲノム計画の後の研究で、転写されたほとんどのRNAが実は蛋白に翻訳されないことが分かってきました。この部分をnon-coding RNAと言います。
 生物の講義などで、RNAはmessenger RNA(mRNA)とtransfer RNA(tRNA)とribosomal RNA(rRNA)の3つあります….と勉強したと思いますが、今ではこれにnon-coding RNAが加わり、その中にmicro RNA(miRNA)というのも入ります(このmiRNAは最近の論文でmiR-133とか数字が入ってよくでてきますが、また別の機会に紹介します)。
 そして、10万個あると想定されていた遺伝子でしたが、実際にmRNAに転写されるのは2万個しかないということが分かってきました(線虫でも1万5〜6千ありますが、ヒトと線虫でもそれくらいの差しかありません しかし、線虫の遺伝子は1億塩基対しかありません…どういうこと?)。
 現状では、non-coding RNAが8万個以上あると想定されており、このnoncoding RNAが転写を調節する働きをもち、ヒトの高機能性や複雑性を規定していることが分かってきました。すなわち、ヒトが線虫と異なる、複雑な脳機能をもち、それを駆使して色々なことができるのは、遺伝子からできる蛋白の種類(数)ではなくて、その発現調節で量や時間や場所を規定することにある(設計図はそんなに複雑でなくても、その使用方法が重要)と考えられるわけです。
 このnoncoding RNAの働きを含む遺伝子発現調節に関わる学問領域を「エピゲノム」「エピジェネティックス」と呼び、ゲノムによらない遺伝子発現調節機構の解明が、biologyの中での大きな研究テーマとなっています。我々が携わる医学においても疾患(特に生活習慣病など)の発症に大きく関わることが分かりつつありますし、抗がん剤などの薬剤作用機序の理解のためにも避けて通れません。さらに、上で紹介したmicro RNAも、治療薬としての可能性もでてきています。…ということで、やっぱり医学の中でも、理解しておく必要はありそうです。続きは、またの機会に。 ty
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